鈴木 真
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患者さま側と医師側、両方のメリットが根付けば飛躍的に広がってゆく。

亀田総合病院 産婦人科部長/医療安全管理室長/総合周産期センター顧問

鈴木 真

カルテ開示のメリット

主だったメリットで言うと、例えば検査の重複などは確実に減ってゆくでしょう。開業医の先生方は患者さまご本人に問診してお薬の処方をしているのだけれど、もしそれがデジタル化して開示されてゆけば、当然お薬処方の情報についての食い違いはぐっと減りますね。
患者さま自らがカルテに入力し、情報が更新されてゆけば、より子細な診断が可能となります。従来は、例えば血圧の記録を例に挙げると「血圧手帳」というアナログの物があるんです。しかしデジタルを上手に活用すれば、血圧の動きもカルテと連動させてリアルタイムで見ることができます。何時何分に血圧が急上昇している、といったデータがあれば、アナログとは段違いの具体的な細かな診断・対処できます。使い道は広いですよ。

電子カルテに秘められた可能性

電子カルテに書かれてあることで何より重要なのは、医師のシンキングプロセスなんです。どういう問診が行われ、最終的な診断結果へつながったか。そして今後の見込みはどうか。現在の症状は、記載されていることと果たして関連しているのか。それらがカルテを見てわかれば医師の負担が減りますし、患者さまも安心できますよね。
これがさらに発展し、もし生まれた時からカルテがあってそれらが電子化されてゆけば本当に素晴らしいですね。実は今、成人病胎児期発症説というセオリーが医学会でとかれています。その名の通り成人病というのは母胎にいる時から罹ることが決まっているという説なのですが、例えば家族の電子カルテも開示されていれば、遺伝的に罹りやすい病気等がわかったりするかもしれません。
そういったあらゆる可能性の基盤に、カルテ開示がつながっていってほしいと考えています。

すべてがデジタル化してゆく時代において

ITに関するある程度のリテラシーは、もはや持たざるを得ない時代。私達の周りはデジタルであふれています。銀行の預金残高ですらもスマホで見られる時代。電子カルテに関しても、もうアナログから切り替わる時代はとっくに来ているのです。
患者さまは自分の電子カルテを自由自在にスマホで見て、それを持って町のかかりつけ医に行く。そしてかかりつけ医で診てもらった診察結果を持って、また他院へ足を向ける。そうしていくうちに、患者さま側も医師側も両輪で状況が変化してゆくのかもしれません。患者さま側と医師側、両方に存在するメリットが根をおろせば飛躍的に広がってゆくでしょう。